JOURNAL
自分が自分らしくあるために、
幸せを実感しながらより輝いて生きるひと。
ブレない軸を持ち、本質的な豊かさを見出だすひと。
そんなイラリなひとに、豊かな暮らしの本質を学びます。
時代の先をゆく賢者たちのライフスタイルから、
強く、しなやかに生きるヒントを見つけてください。
『ホリスティック×ラグジュアリー』の新潮流
時代を生きる『2025年イラリな人 前編』〜文・齋藤薫〜
Vol.8 齋藤 薫(さいとう かおる)さん 美容ジャーナリスト/エッセイスト
日常に、心と体を満たす贅沢な時間を取り入れて、ホリスティック×ラグジュアリーな新体験を。それは、イラリが提案する、これから目指すべきライフスタイル。シンプルに、エイジレスに、心身の調和を意識しながらより豊かに「いま」を生きるための定義です。
2025年春、美容ジャーナリスト・齋藤薫さんが『ホリスティック』と『ラグジュアリー』をキーワードに、眩いほどの “幸せオーラ”を放つためのヒントをお届け。
イラリ読者に向けた、心に響く「前後編・書き下ろしエッセイ」をお楽しみください。

Holistic Luxury #1まず自分を断捨離して、浄化して。
すると大切なものが見えてくる
漠然とでも生き方を変えたいと思う時、“変える”ことよりまず“捨てる”ことから始めたい。自分の中の無駄なものって何だろう。例えば家の断捨離でも、ハイブランドの紙袋を捨てられない性分が無駄なのだと気づくこと。毎年もコートとブーツを買わなければいけないと思っていた自分。行きたくない集まりにも行く自分。情報に振り回される自分。人と比較してしまう自分。そうやって無駄な自分にまず気づくことなのだ。
それだけで人は変われる。ひとたび無駄と思うと、不思議なくらいスルスルと要らない自分が排除されていく。特に今の大人は飽食の時代を生きてきて、とにかく“増やすこと、盛ること”がラグジュアリーであると思い込んでいた。でも今は逆。無駄なものを持たない、シンプルに研ぎ澄まされた生き方こそが真のラグジュアリーであると、みんなが気づいたのだ。
だから、まずはそういう自分の価値観から整理をしよう。気づくだけで捨てられるのが自分自身の断捨離。そうやって気づいて捨てて、まさに体が軽くなるほどシンプルに浄化されると、すると今度は本当に必要なものが見えてくる。ごちゃごちゃだから見えなかった大切なものが。がらんとしたクローゼットに、さぁ何を入れようか?と思うだけできっと新しい自分にワクワクするはず。
まずはそこからスタートしたい。
Holistic Luxury #2知らない場所に行き、知らない人に会い、
知らない自分に出合うこと
脳科学や心理学がこぞって指摘しているのが、最強のアンチエイジングは“好奇心”であるということ。それは、知らないところに行って、知らない人と会って、今までしたことのない会話をすると、それだけで全く知らない自分が現れて、自分自身を刺激するから。
同時にそれは新しい細胞が湧き立つことを意味していて、自分の中で新しい扉が開かれるから、自然に人生が長引いてしまうという考え方なのだ。エイジングケアは本来が鏡の前でするものでないのだろう。むしろ新しい自分に出会うことこそ、真の衰え防止。そのために今何ができるかと考え始めると、人間じつはそれだけでも若返っていく。
そもそも好奇心とは、未知のことに対する興味や関心。あくまで心の中の衝動に他ならない。今はまだ動く時間がないと言うのなら、意識だけいい。好奇心でいっぱいにしてみて欲しい。例えば5年後の旅の計画を立てるようなこともまた、好奇心で心を埋めるテクニック。逆にそうしないと、心がスカスカになり、良くない感情が入り込む。
そうならないため、気持ちを常に前向きに健全にしておくための栄養が、好奇心なのだ。知りたい心がある限り、人の脳も成長を続け、知的年齢は実は70代がピークであるとか。脳を太らせるためにも、自分の心を常に高揚させておくことなのだ。

Holistic Luxury #3奇跡の00歳はもう当たり前、
だから自分自身が奇跡になる
奇跡の50代、奇跡の60代がどんどん増えていく時代。それこそ夏木マリさんや前田美波里さんなど、時代は既に“奇跡の70代”を輩出し始めた。しかもこの人たちは、単に見た目の若さだけで人をビックリさせるのではない。歌う、踊る、生命感そのものが奇跡的。年齢を重ねて失うものなども何もないのだと言うことを教えてくれる。
それがわかったからには、こう考えるべきではないか。自分自身が奇跡になろうと。
難しいことではない。年齢にまつわる既成概念を取り外せばいいだけ。この年齢で、この服は派手かしら? 例えばそれはもう愚問。誰がどんな服を着ようと誰も咎めない。少なくとも今はそんな時代。それどころか、モードな服は歳を重ねてからの方がむしろ似合う。
実は歳を重ねるほどに派手も似合うのだ。でもなぜ? 真っ赤なスポーツカーもグレーヘアの方が似合うように、キャリアを積むことで理屈抜きの“こなれ感”が生まれ、背伸びの痛々しさが見えないからなのだ。本当の意味のラグジュアリーが身に付いてくる年齢だからなのだ。
となれば、逆に歳を取るのが楽しみになる。60代になったらこれを着よう。70代になったらこれにも挑もう、そういう未来への夢が果てしなく広がっていく。そう思った途端に、自分自身が奇跡になっている。年齢にとらわれない、若いことが良いことだという過去の価値観にとらわれないオシャレと美容。そこでもう奇跡は始まっているのだ。
年齢観からの解放、それ自体とてもホリスティックなことなのだから。
Holistic Luxury #4人に感動すること、
それ以上に人を成長させてくれるものはない
最近、何に1番感動しただろうか。どんなことに涙が出ただろうか。スポーツでも、芸術でも、ドキュメンタリーのような記録であっても、結局のところそれは“人”に感動したに他ならない。何かを成し遂げたり、大傑作を生んだりする人が、その達成までどれだけ努力し、どれだけ何かを犠牲にしてきたか、それを知るから涙が出るのではないか。
そういう境地に達すると、事実は小説より奇なり、フィクションでは絶対得られない衝撃と感動を求めて、映画も実話モノを求めるようになるはずなのだ。実話系の映画には決まって“諦めない人”が出てくるから。
女性差別と戦った芸術家を描く「コレット」や「ビッグアイズ」、人種差別とも戦ったNASAの女性たちを描く「ドリーム」。どれも強烈な感動がある。こういう女性が実在したのだという事実に。奇しくも今、完全に多様化の時代だからこそ余計に胸を打つのだ。
でもその実話をも超えて、諦めずに進化していく人間を描いた「哀れなるものたち」には、また別次元の感動があった。
人生は全てが修行であり、全て意味あることなのだと教えられたから。
これらは皆、諦めなければ人は必ず進化するという人間の摂理を教えてくれる。だから私たちは人に感動するのだ。そして、人に感動すること以上に人を成長させることなし、と思い知る。よく「勇気をもらう」と言うけれど、これこそがリアルに勇気をもらうと言うことなのではないか。

Holistic Luxury #5例えば「一日一善」の科学的根拠
そもそも何のためか?に気づくこと
一日一善…… 1日に1つでいいから善いことをせよという仏教の教え。誰でも知っているこの提案を今更ながらに引っ張り出したのも、昨今は“その効果”が科学的にも証明されるようになったから。
もちろん道徳的な教えに他ならず、本来は因果応報、善いことをすると善いことが、悪いことをすると悪いことが、自分に返ってくるとの考え方からきているが、ゴールは同じ“幸せになるため”。だったら科学的に納得づくの方が続きやすいはずと考えてみた。
実は良いことをすると、いちいち幸せホルモン“オキシトシン”が分泌される。
親切にしたり、優しい言葉をかけたり、人を褒めたり。そのたびにストレスが消え、幸福感が増していく、そういう仕組みがあるというのだ。もちろんそれが目的の善行では意味がないが、そもそも人に好かれる心が整った人は、オキシトシン量が多いと言う。だからそういう人になるまで続けてみたいのだ。体内のオキシトシンレベルが上がるまで。
きっと生きることも楽になる。そして何より愛される。そうホリスティックな生き方って独りよがりのものであってはいけないから。
相手があって、相手も一緒に幸せにしてこそのもの、そこに気づくと、この「一日一善」がもっと意味があることに思えてくるはず。そもそも習慣が人格を作ると言うから、気がつけば素晴らしい人格の出来上がり。こんなに実のあるルールは無いはずなのだ。

Holistic Luxury #6“丁寧に暮らす”と、“大胆に生きる”、
両方のバランスを取ること
コロナ禍で改めて見直されたのが“きちんと暮らす”ということだった。でも丁寧すぎると日々はやっぱり退屈なものになる。そこに自分自身をもドキドキさせる大胆な行動、例えばある日突然思い立って海外でのロングステイを決めるような。
そういう想定外の行動をまぶしていくと、人生は一気に彩り豊かなものになる。人も生き方も大切なのはバランスだから。例えば美しさの重要な軸は、時代を超えて“清潔感”だけれども、人間が退屈に見えないよう、一方に”人としての色気“を併せ持つことが魅力の条件となる。
言い換えれば、相反する2つの要素を併せ持つ矛盾こそ、人をラグジュアリーに見せる絶対の決め手なのだから。
体に良い食生活もストイックに“禁止”するばかりでなく、時々豪勢にご褒美をあげるようなバランス感覚がとても大切。その時、ただ何も考えずにどっちつかずに生きてしまうと常にモヤモヤしたままでバランスも整わない。
だからこそ、丁寧と大胆、禁止とご褒美、と“両極”を意識してみるべきなのだ。
同じように、体と心、内と外、そのバランスも意識してとっていくべき。ピラティスと瞑想、塗るケアと飲むケアと、両方を同時に意識して行う人が今とても増えているのもその結果だろう。それこそがホリスティックな生き方といえるから。

Holistic Luxury #7心地よいことは、3倍多く、濃密に。
幸福感をドカンと増やす絶対のコツ
今、注目の幸福学に「ありがとう」をたくさん言うと幸福が得られるという法則がある。
精神論としては平凡な提案だけれど、厳密には“家族に対しても今の3倍も5倍も、できるなら10倍も多く頻繁に「ありがとう」をいう”と、その効果がハッキリわかると言うのだ。
実際試してみると、なるほど、意識してありがとうを一気に増やすと幸福感がドカンと増す。「ありがとう」は自分のための言葉だったのだと気づくのだ。良かれと思ってやることも、中途半端だと効果が出ないということにも気づかされた。
例えばリラクゼーションや癒しも、中途半端では癒されない。休息だって、ダラダラ休むとかえって疲れる。そういうこと。現代人は色んな刺激に麻痺していて、ソコソコでは一線を超えられない。本当に3倍から5倍のテンションと緻密さで事に当たるべきなのだ。
疲れてしまわない?と言うかもしれない。でも、自分にとって心地良いことならば、徹底してやるほどに充実感も増す。その結果得られる幸せが高次元のものになるのは想像がつくはず。
自分の中に明快な幸せを増やすためには、そういう集中力を持つべきなのだ。例えば食卓のキャンドルも3倍にしたら幸せが増した。美術館での絵の鑑賞も、3倍時間をかけたらガゼン絵が好きになってきた。
体の中くすぶっていたものが幸せと言う形になって湧き出してくる。そんな感覚。3倍濃厚な生き方。試してみて欲しい。

齋藤 薫さん(KAORU SAITO)
/美容ジャーナリスト/エッセイスト
プロフィール:
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーとしても活躍。
『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)、『一日一ページ読めば、生き方が変わる だから“躾のある人”は美しい』 (集英社文庫)ほか著書多数。