INTRODUCTION

星に夢中になり始めたのは14歳のころ、当時(1980年)手描きで作成したホロスコープを眺めては、惑星が示す意味と同時代の出来事との共時性にワクワクしていたのを覚えています。
そのときの天体配置で特に印象的だったのは土星と木星が共に乙女座から天秤座に移動して約600年ぶりに風のエレメントに集っていたこと。
いまでは多くの人が耳にする「風の時代」へのストロークを感じながら未来の私らしい在り方を模索していました。
そこから半世紀近い月日を経た現在、新しい時代の到来は外からもたらされる以上に、個々の内なる気づきと豊かな繋がりから拡がっていくのだと実感しています。
この連載では、惑星たちが奏でる二十四節気ごとの天体配置から、より魅力的で私らしい暮らしを楽しむための星々の語らいをお伝えしていきます。

大寒・水瓶座の季節(20 January)

2025年1月19日

冬の寒さがピークを迎える「大寒」。

水瓶座に入ったばかりの夜明け前の太陽は、
古い時代から引き継がれてきた叡智を、
これから新しく生み出される未来に繋げようとしています。

先に水瓶座入りしていた冥王星との重なりは、
その太陽を待ち受けるかのように
世の中の激しい変化や驚きによる新しい視点への目覚めをもたらしてくれそうです。

未来へのヴィジョンを
「怖れを感じさせる外からの脅威」として捉えるのではなく、
「内側から湧き起こる創造性」を引き出していく、
導きの体験としていくための
いくつかのダイナミックな流れが用意されているようです。

個々が抱えている自分自身の在り方や、
世の中に対する心理的な投影がデトックスされていくような、
印象的な出来事が起きてくるかもしれません。

ここ数年、水瓶座的なトピックとして
AIの加速度的な進化が話題になっていますが、
星々の配置は、技術革新の表層的な側面よりも、
「すべての時代を超えたヴィジョンを新たな方法で獲得する」
「様々な価値や文化をより抽象度の高い視点から見つめ直す」
といった、より深いところに焦点をあてているようです。

ギリシャ神話では、ガニメデウス(喜びをもたらすもの)という名の美しい若者が、
神酒ネクタルを注ぐイメージが伝えられています。

このネクタルには、人々の重たい思念や停滞したエネルギーを洗い流し、
未来への希望を注ぎ込むイメージも付与されています。

水瓶座のシンボルマークも「波」の形をとっていますが、
私たち一人一人がより自由で本質的な『私』でありながらも、
同時に調和的な叡智にたどり着くための新時代の潮流を表しています。

量子論の“波動粒子二重性”のなかで語られる「波」の例えも興味深く、
今後の量子コンピューターの可能性や、
新しい死生観をもたらす量子脳仮説など、
水瓶座時代のワクワクを感じます。

1960年代後半のカウンターカルチャーを象徴するミュージカル『Hair』に
「Age of Aquarius」という名曲がありますが、
そこには平和と愛と調和がもたらされる水瓶座時代への希望が込められていました。

「宇宙的な浄化と再生の流れに身を委ねることで、
私たちは水瓶座の時代という新たな地平を力強く進むことができる」
「ネクタルの流れは、星々の間を渡りながら今この瞬間も、
新しいインスピレーションとして私たちに注がれている」

当時のヒッピーたちが待ち望んでいたユートピアは、
その後1980年代から90年代にかけてサイバーパンク小説が描くような
荒廃した未来のディストピアへと塗り替えられていくのですが、
大寒の天宮図の天頂に輝く天秤座の月は、双子座の木星、水瓶座の太陽・冥王星と
緩やかながらも風のグランドトラインを形成し、
60年前に得ていた水瓶座時代のヴィジョンを
新しいリアリティーのなかでもう一度描き直しているようです。
•    古い固定観念が溶解し、各々の個性や主体性を尊重する新しい価値観が育まれる。
•    個人と全体の調和が追求され、個人の自由が世の中全体の発展と結びついていく。
•    新たな知識や技術が、私たちの日常や精神的な在り方を根本から刷新していく。

今回の大寒のホロスコープは、寒さが最も厳しい季節の夜明け前に形成されていて、
春の到来と新しい一日の始まりを迎えるための大切な目覚めを促しているようです。

具体的には、玄関や水回りなど家の中を掃除したり、
引き出しの中のメモ書きやパソコンデータを整理したり、
気になっている人に自然な形で「ありがとう」を伝えたり。

同時に心のデトックスをはかることで有形無形の重たい荷物を下ろし、
軽やかなスタートを切る土台を作っていく感覚が大切です。

新たな目標や潜在的な願望に気づいたり、
その実現のための小さな一歩を踏み出すタイミングにも恵まれそうです。

静かに自分を見つめ直し、春に向けた準備を整えることで、
ルーティンな日常に新鮮な流れを呼び込んでくれそうです。

私たちが過去から何を学び、次なる可能性へと進むための道筋をどう整えていくか?
少しの工夫と意識の在り方次第で、
日々の暮らしがより楽しく心豊かなものになっていくでしょう。

未来への飛躍のための重要なシーズンと言えそうです。


イズモアリタ(MASAFUMI ARITA)

星の神話とタロットの図象
/伝承叡智の研究
テキスタイル&グラフィック
/デザイナー

プロフィール:
星とタロットの図案家として 未発掘の心象シンボルと無意識の同時代カルチャーをスケッチしている。2004年より世田谷ものづくり学校にアトリエを構え、コンバースシューズやヤコブセンのチェアをはじめ、BEAMS、IDEE、CIBONE、サザビー、ほぼ日、JTB、伊勢丹BPQC、高島屋、等で様々なプロダクトを発表してきた。近年は、独自の縄文&出雲的な感性と星々との呼応から制作活動を展開。古代の伝承から同時代のものまで古今東西の文化に詳しく、ゼロ歳からのワークショップ、美術大学で造型指導も行っている。

イズモアリタ lit.link
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