INTRODUCTION

星に夢中になり始めたのは14歳のころ、当時(1980年)手描きで作成したホロスコープを眺めては、惑星が示す意味と同時代の出来事との共時性にワクワクしていたのを覚えています。
そのときの天体配置で特に印象的だったのは土星と木星が共に乙女座から天秤座に移動して約600年ぶりに風のエレメントに集っていたこと。
いまでは多くの人が耳にする「風の時代」へのストロークを感じながら未来の私らしい在り方を模索していました。
そこから半世紀近い月日を経た現在、新しい時代の到来は外からもたらされる以上に、個々の内なる気づきと豊かな繋がりから拡がっていくのだと実感しています。
この連載では、惑星たちが奏でる二十四節気ごとの天体配置から、より魅力的で私らしい暮らしを楽しむための星々の語らいをお伝えしていきます。

雨水・魚座の季節(18 February)

2025年2月17日

「気雪散じて水と為る也」

室町時代の陰陽師・賀茂在方が記した『暦林問答集』の一節。
雪が雨へと変わり、氷が解けて水になるさまを表した、
この時季ならではの移ろいを感じさせる言葉です。

都市生活のなかで雪景色を目にするのは稀ですが、
遠く離れた山あいの氷が解け出し、私たちの暮らしを潤す水となっているように、
日頃気づくことなく享受している豊かさの源流を改めて見つめ直すことが、
この季節のテーマになっています。

冬の静寂から春の活気へと移行するなか、
心の奥で待機していた未来を描くための豊かな感性が動き始めます。

魚座のシーズンは、内なるインスピレーションを頼りにしながら、
外の世界へと新たな可能性の扉を開くタイミングでもあります。

2025年 雨水のホロスコープ

この雨水のホロスコープでは、
魚座の太陽に寄り添う 6ハウスの水星 に対し、
MC(天頂)に輝く双子座の木星 が“開かれた視界による見直しの角度”を形成。

さらに、魚座の太陽・水星に加え、土星・海王星・ドラゴンヘッドが
6ハウスから7ハウスにかけて ステリウム(天体の集合)を形成し、
蟹座の火星・蠍座の月とゆるやかなトライン(調和的な角度)を描いています。

この配置は、単なる目先の適応ではなく、
これまで培ってきた 関係性を豊かに育むこと の重要性を示唆しています。

技術革新や社会の新しい流れに対し、
理論や合理性だけではなく 情緒的な共有や長期的な絆の形成 がより大切になるでしょう。

新時代を牽引する天王星も、ドライな変革ではなく、
世の中全体を豊かにするための 情報共有 を促しています。

その情報とは、数値化されたエビデンスや確実なデータだけではなく、
新たに共有すべき空気感や新鮮なイマジネーションを含むもの。

雨水の時期は、新しい情報を取り入れ、それを分かち合うことで
次なる豊かさを生み出す好機となります。

言葉を超えた心の通じ合いをベースに、
創造的な可能性を模索していくこと。

それこそが、この雨水の季節の核心にあるミッションなのかもしれません。

私たちは何を受け取り、何を伝え、どのように未来へとつなげていくのか。

雨水の水脈をたどるように、言葉の背後に潜む豊かな流れを感じながら、
2025年の春を迎えたいですね。


イズモアリタ(MASAFUMI ARITA)

星の神話とタロットの図象
/伝承叡智の研究
テキスタイル&グラフィック
/デザイナー

プロフィール:
星とタロットの図案家として 未発掘の心象シンボルと無意識の同時代カルチャーをスケッチしている。2004年より世田谷ものづくり学校にアトリエを構え、コンバースシューズやヤコブセンのチェアをはじめ、BEAMS、IDEE、CIBONE、サザビー、ほぼ日、JTB、伊勢丹BPQC、高島屋、等で様々なプロダクトを発表してきた。近年は、独自の縄文&出雲的な感性と星々との呼応から制作活動を展開。古代の伝承から同時代のものまで古今東西の文化に詳しく、ゼロ歳からのワークショップ、美術大学で造型指導も行っている。

イズモアリタ lit.link
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