Vol.9 スパークリングワインのいろいろ

2025年2月28日

グラスに注がれたスパークリングワインの気泡を見ているだけで、幸せな気持ちになってしまうのは私だけでしょうか。

パーティーでの乾杯は勿論のこと、食前酒からメインのお料理、デザートにまで合わせることができる多彩なその味わいは、産地や葡萄品種、製法などの違いにより生まれます。

イラリが提携するアルベ・イ・ノヤが造るスパークリングワインは、バルセロナ南部ペネデス王道の葡萄品種を原料に、瓶内二次発酵方式という製法で造られます。

今回は、瓶内二次発酵方式の他、代表的なスパークリングワインの製法とその特徴をご紹介。
また、注目のスペイン産スパークリングワインの動向をお伝えしたいと思います。

◆代表的なスパークリングワインの製法と特徴

ご存じの通りスパークリングワインの泡の正体は炭酸ガス(二酸化炭素)です。アルコール発酵中に発生し、それをワインに封じ込めたものがスパークリングワインになります。
それを踏まえて製法別に整理してみましょう。

① 瓶内二次発酵方式
別名:シャンパーニュ方式(メトード・シャンプノワーズ)、トラディショナル方式(メトード・トラディショネル)
スパークリングワインの製法の中で最も手間がかかります。

一次発酵により出来た辛口のワインを瓶に入れ、同時に酵母と糖分を加えます。
王冠で仮に栓をして、密閉した瓶内で2回目の発酵(二次発酵)を進めます。
発酵が終わった後も、澱(おり/発酵を終えた酵母)と一緒に瓶内で熟成。
そうすることで、澱からの旨み成分をワインに与えることが出来ます。
また、発生した炭酸ガスが時間をかけてワインに溶け込むことで、持続性のあるきめ細やかな泡が生まれます。
これらが瓶内二次発酵方式で造られるスパークリングワインの特徴にもなっています。

さらに作業は続きます。
熟成期間中は瓶を少しずつ傾け(最終的には瓶の口が真下を向くまで)、澱を瓶の口に集めていきます。
澱を取り除くため王冠を外し、炭酸ガスの圧力で素早く澱だけを飛び出させます。
同時に味わいを調整するため糖分を加えます。
コルクで栓をして完成です。

② タンク内二次発酵方式
別名:シャルマ方式(メトード・シャルマ)
一次発酵により出来た辛口のワインを大型の密閉式タンクに入れ、2回目の発酵(二次発酵)をタンク内で行います。ボトル1本ずつ仕上げる①より効率的で時間を掛けずに造ることが出来ます。アロマティックでフレッシュフルーティーなスパークリングワインに仕上がります。

③ トランスファー方式(メトード・トランスファー)
瓶内で二次発酵し、澱と一緒に熟成するところまでは①と同じです。瓶内の中身を澱ごと全てタンクに集め、まとめて澱を取り除きます。再度ボトリングして完成。
ボトル1本ずつ仕上げる①に比べ、品質を均一化させることができます。また、澱を取り除く作業がより効率的なので、①より安価に造ることが出来ます。

④ 田舎方式
別名:アンセストラル方式(メトード・アンセストラル)、リュラル方式(メトード・リュラル)
一次発酵の途中(もともとの葡萄の糖分が残っている状態)のワインを瓶に詰め密閉。続きの発酵を瓶内で行い、その際発生した炭酸ガスがワインに溶け込みます。①~③のように酵母と糖分を加えないので、アルコール度数とガス圧が低くなるのが一般的です。

また、最近よく見かける「ペット・ナット(Pet Nat)」(*自然な弱発泡性ワイン「ペティアン・ナチュレル(Petillant Naturel)」を略した名称)もこの方式によるスパークリングワインです。
わざわざ「自然な」というくらいですから、天然酵母で発酵、酸化防止剤無添加、澱抜きをしないので、多くの場合濁っています。
アルコール度数が低くジューシー!気軽に楽しめるところがウケています。

⑤ 炭酸ガス注入方式
上記の①~④ように発酵中に発生する炭酸ガスを利用せず、ワインに炭酸ガスを注入する方式です。比較的気泡が大きくガスが抜けやすいのが難点ですが、安価に楽しめるところが最大の魅力です。

スパークリングワインにはいろいろな製法があり、それぞれに魅力があります。
ご自身のライフスタイルやTPOに合わせてお楽しみ下さい。

◆2025年、スペイン産スパークリングワインの動向

スペイン産のスパークリングワインと言えば、真っ先に思いつくのがCava(カバ)ではないでしょうか。
Cava(カバ)はシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵方式により造られますが、一時、大量生産に伴う品質低下によりブランドイメージが低下。近年、品質重視の生産者たちが独自の生産者団体を立ち上げ、より厳しい規定を設けることにより高品質のスパークリングワインを造り出しています。

イラリが提携するペネデスのアルベ・イ・ノヤは、Cava(カバ)から脱却し独自のブランドを立ち上げた生産者のひとり。2014年に「DOクラシック・ペネデス」を立ち上げました。

 DOクラシック・ペネデスの厳しい規定

●シャンパーニュと同様の瓶内二次発酵方式。
●瓶内熟成期間は15カ月以上。
●100%オーガニック栽培。
●土着品種であるチャッレロ、マカベオ、パレリャーダほかを使用。
など。

 

現在「DOクラシック・ペネデス」に多くの生産者が賛同し、アルべ・イ・ノヤに続いています。

※世界のベストレストランのトップソムリエたちが高く評価するアルべ・イ・ノヤのワインは国内外で多数の輝かしい受賞歴を誇ります。2024年2月に行われた「ワールド・ベスト・ソムリエ・セレクション2024」では、スペインで唯一「エル・コラル・クレマット2013」がテイスティング部門にノミネートされました。

このような品質重視の生産者団体の出現や、サステナブルなワイン造りが当たり前になりつつある時代の波によりCava(カバ)の原産地呼称統制委員会は大きく舵を切ります。
委員会のJavier Pagés(ハビエル・パジェス会長)によれば、2025年までに、レゼルヴァ、グラン・レゼルヴァを含む高品質のカバのすべてのボトルが、100%オーガニックの葡萄から造られることになるそうです。

今年はその2025年。

今後の世界のスパークリングワイン市場において、100%オーガニックを前面にアピールするスペイン産スパークリングワインから目が離せません。

(参考文献)
Sarah Neish(2024). 「Cava DO on target to become 100% organic by 2025」. The drinks business. 
https://www.thedrinksbusiness.com/2024/12/cava-do-on-target-to-become-100-organic-by-2025/
(2025年2月3日アクセス)

大好きな自然派ワインの魅力を知っていただこうと続けてきたこの連載を、今回で一旦お休みし次に向けて準備をします。少しでも皆さまのお役に立てたのであれば幸いです。お読みいただきましてありがとうございました。

丸山謙二さん(KENJI MARUYAMA)

有限会社みどりや酒店代表取締役

プロフィール:
大学卒業後、建設工事の現場監督を経て、家業の有限会社みどりや酒店に入社。三代目社長。
(社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
ショップでのワイン販売、飲食店のワインリスト提案、ワインセミナー講師、たまに配達、そのほか、生産地に脚を運び自ら買い付けるワイン人。

自然派ワインを広めるべくワイン関連の様々なイベントを企画、開催。異業種とのコラボレーションなどにも積極的に携わる。美味しいものを食べて、ワインとの相性を試したり、想像したりすることが大好きなおじさんだが、最近体脂肪率が気になり筋トレを続けている。

ロワールワイン ワインアドバイザーコンクール全国第3位。みどりや和飲学園園長。
自然派ワインで世界平和!を願う、やぎ座のAB型。子年。