INTRODUCTION
星に夢中になり始めたのは14歳のころ、当時(1980年)手描きで作成したホロスコープを眺めては、惑星が示す意味と同時代の出来事との共時性にワクワクしていたのを覚えています。
そのときの天体配置で特に印象的だったのは土星と木星が共に乙女座から天秤座に移動して約600年ぶりに風のエレメントに集っていたこと。
いまでは多くの人が耳にする「風の時代」へのストロークを感じながら未来の私らしい在り方を模索していました。
そこから半世紀近い月日を経た現在、新しい時代の到来は外からもたらされる以上に、個々の内なる気づきと豊かな繋がりから拡がっていくのだと実感しています。
この連載では、惑星たちが奏でる二十四節気ごとの天体配置から、より魅力的で私らしい暮らしを楽しむための星々の語らいをお伝えしていきます。
冬至・山羊座の季節
midnight 22 December 2025
一年でもっとも夜が長くなるとき
この星を包む気配は密かに生まれ変わり
新たな予感が胎動し始める
冬至は、
天文学的には太陽の南中高度が最も低くなる瞬間を指します。
北半球では昼の長さが一年で最も短くなり、
この時点から日照時間は僅かずつ伸び始めます。
その変化はごく小さなものですが、
確かな反転点として、古くから暦の基準とされてきました。
西洋占星術では、
冬至とともに山羊座の季節が始まります。
土星を支配星に持つ山羊座は、
時間、構造、責任、そして社会的現実と
どのように関わっていくかを司るサイン。
一時的な感情や衝動よりも、
持続性や現実的な判断を重んじる性質を持ち、
長期的な視野に立った確認の時期にあたります。
これからの一年を支えてくれる、
確かな実感をゆっくりと見つけていくための季節と言えるでしょう。

山羊座にイングレスした太陽は、
火星や月とともに、天底(Imum Coeli)から始まる
4ハウスを照らし出しています。
4ハウスは、個人の基盤、ルーツ、内的な拠り所を示す領域です。
この冬至図では、
自らが立っている場所や帰属している感覚、
「安心して力を蓄える場」へと意識が向けられているようです。
来年2026年は、
土星と海王星がともに春分点(牡羊座0度付近)に差し掛かる、
占星術的にはおよそ三世紀ぶりの配置を含みつつ、
水瓶座の冥王星とトラインを組み始める双子座の天王星など、
新しい時代の様相を本格的に体感していく段階へと入っていきます。
その意味で、2025年の冬至は、
もはや後戻りのできない時代の進展を前に、
これまで見てきた世界の捉え方や意味について、
基本に立ち返り、最終確認を行うような時期だと捉えられます。
魚座にある土星と海王星は、
「大きな時代の終わり」や価値観の解体を象徴する配置ですが、
この冬至図では、いずれも6ハウスに位置しています。
そこから、新しい時代へのテーマが抽象的な理念としてではなく、
日々の労働や生活習慣といった
現実のレベルで問い直されていることが読み取れます。
これらの配置は、
家庭や暮らしと労働とのバランスについても、
現実的な調整を促しているように見えます。
2025年の冬至図では、
山羊座のIC(天底)付近に太陽・火星・月が集まる一方で、
対岸の蟹座MC(天頂)には木星が位置しています。
太陽が山羊座に入るとき、
視点を180度反転させて、太陽から地球を見返すならば、
そこに蟹座の領域が広がっていると言えるでしょう。
内側の基盤を深く見つめるほど、
社会や世界との関わり方が静かに浮かび上がってくる、
そのような配置です。
一方で、射手座を運行する水星と金星は、
内側へと立ち返る流れとは異なる、
もう一つの視点をこの星読み全体に添えています。
それは、自身の根っこへと降りていく感覚とは別に、
外界の広い景色を、いつもより距離を置いて見渡し、
これまで蓄積されてきた知や経験を、
アーカイブを辿るように再確認する視線です。
今回の冬至の星読みでは、
山羊座生まれのヨハネス・ケプラーが示した
「数と調和による宇宙理解」を背景に、
後世の占星術で象徴的に読み解かれてきた
クインデチレやセプタイルといった
マイナーなアスペクトにも注目しています。
総合的に見ると、この冬至は、
時代の流れや世界的な動向を見渡す視野を保ちながら、
同時に、これまで背負ってきたこと、
あるいは大切に保ち続けてきた事柄の意味を、
丁寧に再確認していく時期と言えるでしょう。

山羊座の季節に、ふと思い浮かぶ人物のひとりに、
イギリスの陶芸家バーナード・リーチがいます。
リーチの歩みを辿ってみると、
そこには、急ぐことなく内なる時間と向き合い、
生活の中に根を下ろしながら
仕事を育てていく姿が浮かび上がってきます。
英国領・香港に生まれ、日本で陶芸と思想に触れ、
のちにイギリス・セント・アイヴスに拠点を築いたリーチは、
東西の文化圏を往還しながら、 美と生活、
仕事と精神の関係を探り続けました。
彼の姿からは、
陶芸家であると同時に、ものづくりを通して
生き方そのものを考え続けていたことが伝わってきます。
器は、鑑賞の対象というよりも、
日々の暮らしの中で使われ、
時の流れと共に人の手になじんでいく存在です。
リーチが関わったアーツ・アンド・クラフツの思想や、
日本の民藝運動との交流もまた、
生活の中に息づく「用の美」を
見つめ直す試みだったように思われます。
柳宗悦と白樺派、柳宗理へと連なる流れの中で、
リーチの仕事は、国や文化を越えて
静かな対話を続けていました。
出雲の出西窯との関わりにも見られるように、
彼は各地の土や暮らしに身を寄せながら、
ものづくりが生活と切り離せないことを、
実感として共有していったのでしょう。
リーチが示してくれたのは、
完成された理想像というよりも、
「どのように続けていくか」という問いだったのかもしれません。
それは、山羊座の季節に自然と立ち上がってくる、
持続や基盤といったテーマとも穏やかに重なります。
私たちがリーチの足跡から受け取れるものがあるとすれば、
それは自分の暮らしや手の届く範囲を、
ていねいに整えていく感覚ではないでしょうか。
急がず、比べず、
コツコツと続けられるリズムを見つけること。
小さな実践の中に、
自分なりの確かさを宿していくこと。
東西を往還する大きな旅を重ねながらも、
最終的にリーチが向き合っていたのは、
ごく身近な生活の手触りだったように思えます。
冬至から始まる新しい時間に向けて、
私たちもまた、
自分の足元にある尊い光に目を向け、
それを支える基盤を、静かに整えていく。
そんな姿勢が、この山羊座の季節には
大切なのかもしれません。

イズモアリタ(MASAFUMI ARITA)
星の神話とタロットの図象
/伝承叡智の研究
テキスタイル&グラフィック
/デザイナー
プロフィール:
星とタロットの図案家として 未発掘の心象シンボルと無意識の同時代カルチャーをスケッチしている。2004年より世田谷ものづくり学校にアトリエを構え、コンバースシューズやヤコブセンのチェアをはじめ、BEAMS、IDEE、CIBONE、サザビー、ほぼ日、JTB、伊勢丹BPQC、高島屋、等で様々なプロダクトを発表してきた。近年は、独自の縄文&出雲的な感性と星々との呼応から制作活動を展開。古代の伝承から同時代のものまで古今東西の文化に詳しく、ゼロ歳からのワークショップ、美術大学で造型指導も行っている。
イズモアリタ instagram
@izumoarita