INTRODUCTION
星に夢中になり始めたのは14歳のころ、当時(1980年)手描きで作成したホロスコープを眺めては、惑星が示す意味と同時代の出来事との共時性にワクワクしていたのを覚えています。
そのときの天体配置で特に印象的だったのは土星と木星が共に乙女座から天秤座に移動して約600年ぶりに風のエレメントに集っていたこと。
いまでは多くの人が耳にする「風の時代」へのストロークを感じながら未来の私らしい在り方を模索していました。
そこから半世紀近い月日を経た現在、新しい時代の到来は外からもたらされる以上に、個々の内なる気づきと豊かな繋がりから拡がっていくのだと実感しています。
この連載では、惑星たちが奏でる二十四節気ごとの天体配置から、より魅力的で私らしい暮らしを楽しむための星々の語らいをお伝えしていきます。
処暑・乙女座の季節(22August)
太陽が乙女座に“イングレス”する「処暑」。ひと雨ごとに暑さがおさまっていく季節です。
乙女座には、魚座・双子座・射手座と同じMutable(ミュータブル)と呼ばれる属性があり、それまでの季節が揺らぎ始めることから「柔軟さ」を授かっていると言われています。
太陽が獅子座から乙女座へと移行していくときのコントラストは、夏休みも終わりが近づき、うっかり溜め込んでしまっていた日記や宿題に取り組む感覚に近く、親が子供のイベントに付き添う日々から通常モードへと戻っていく、そんなイメージも重なります。
処暑(8月22日)から秋分(9月22日)までの星々のアドバイスは、
「身近な暮らしに影響を及ぼす世の中の変化に備えて、いま気付けること、出来るところから整え始めること。」
「そのためにも根拠が確かで上質な情報を、信頼しあえる人達とこまめにシェアしていくこと。」
東の空に輝く双子座の火星と木星はコミュニケーションの大切さを促しつつ、魚座を逆行中の土星と海王星のスクエア(90度)は、きちんと考察していくことの重要性を示しています。
更に乙女座の金星が加わることでT字スクエアというハードなアスペクトが形成されるのですが、その金星にエールを送っている天王星の働きかけも含め、「行き交う情報に対して、ストレスや混乱に巻き込まれないための『柔軟な感性』が大切になっていきそうです。
少し前の8月20日には水瓶座の満月があり、9月3日には乙女座新月をむかえるわけですが、太陽からの反射光が最大限に注がれる満月と、その光が新たに育ち始める新月のメッセージは世の中の情勢や暮らしのなかでの体感を細やかに伝えていくことで定評があります。
月は幼少期や過去からの影響による心理的な投影や思い癖、群集心理なども暗示していますが、月がもたらすメッセージには、無意識の奥の“アカシック”な領域から注がれる「魂の課題」を鏡ごしに映し出しているようなニュアンスも感じられます。
イラリの「星々の語らい」では、月の光源となる太陽そのものの動きにフォーカスしています。
太陽が各星座の0度と15度を通過する二十四節気のうち、太陽のイングレス(次の星座への参入)を起点に、日本の首都である東京の緯度経度で天宮図を読んでいくのですが、月のメッセージよりもワンオクターブ抽象度の高いインスピレーションへとチューニングすることで、一人一人の暮らしを、より創造的に見立て直していけるような視点を提案していきたいと考えています。
処暑の季節、太陽から下弦の月に注がれる光は「共有と共感からもたらされる未来への活力」を示していて、良質な情報をシェアしていくプロセスが『個々の癒し』へと繋がっていく流れもあり、土星・天王星・海王星・冥王星が揃って逆行する数ヶ月間、立場の違いから生じる価値の衝突、世の中の複雑さや先行きの不鮮明さに対し、どの様な状況下でも創造的な起点を見出していくための『柔軟な感性』を育むことが課題となっていて、個々の気付きに応じて沢山の導きを得られる天体配置です。
今回は、乙女座のニュアンスも感じながら、専門的な語彙をいつも以上に散りばめてみました。
私たちは「なんだか難しそう」という呪文を使うことで、過去の思考領域に留まりがちですが、ネットでの検索やプロンプトと呼ばれるAIへの質問入力、専門分野の読書や勉強会を通じて「新しい知見がどんどん広がり深まっていくワクワク」へとアクセスすることも、この季節の太陽の恩恵を存分に楽しむ機会になりそうです。
イズモアリタ(MASAFUMI ARITA)
星の神話とタロットの図象
/伝承叡智の研究
テキスタイル&グラフィック
/デザイナー
プロフィール:
星とタロットの図案家として 未発掘の心象シンボルと無意識の同時代カルチャーをスケッチしている。2004年より世田谷ものづくり学校にアトリエを構え、コンバースシューズやヤコブセンのチェアをはじめ、BEAMS、IDEE、CIBONE、サザビー、ほぼ日、JTB、伊勢丹BPQC、高島屋、等で様々なプロダクトを発表してきた。近年は、独自の縄文&出雲的な感性と星々との呼応から制作活動を展開。古代の伝承から同時代のものまで古今東西の文化に詳しく、ゼロ歳からのワークショップ、美術大学で造型指導も行っている。
イズモアリタ lit.link
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