INTRODUCTION

星に夢中になり始めたのは14歳のころ、当時(1980年)手描きで作成したホロスコープを眺めては、惑星が示す意味と同時代の出来事との共時性にワクワクしていたのを覚えています。
そのときの天体配置で特に印象的だったのは土星と木星が共に乙女座から天秤座に移動して約600年ぶりに風のエレメントに集っていたこと。
いまでは多くの人が耳にする「風の時代」へのストロークを感じながら未来の私らしい在り方を模索していました。
そこから半世紀近い月日を経た現在、新しい時代の到来は外からもたらされる以上に、個々の内なる気づきと豊かな繋がりから拡がっていくのだと実感しています。
この連載では、惑星たちが奏でる二十四節気ごとの天体配置から、より魅力的で私らしい暮らしを楽しむための星々の語らいをお伝えしていきます。

秋分・天秤座の季節(22September)

2024年9月21日

この秋分から冬至にかけて、長期的な発展に関わるいくつかのメッセージが示されています。
そこではクラウドとサクサク繋がるための機種変を行うように、私たちひとりひとりが星々が奏でるハーモニーとセンス良く同期していけるような“感性のアップデート”も重要になっていきます。

12星座別の星占いでは、生まれた時の太陽星座をもとにアドバイスを放ちますが、割りてられた「私の星座」におさまりの良さを感じる一方で「固定されたポジション分け」という思考パターンをもたらしてしまうのも事実です。
心理学でバーナム効果と呼ばれる、誰の心にも響くような深イイ示唆に富んだメッセージを、自分の星座だけに当てはまっているような感覚で受け取るとき、心の共振作用も手伝って「今月もなんとなく当たっているな」という、ある種の心地よい依存関係が成立していきます。
この「わかりやすい単純さ」は、星占いの商業的な発展に大いに貢献して来たのですが、ふわっとしたままで期待通りの結果に辿り着けないもどかしさを抱えることも多いのでは?

星々の叡智を最大限に活用しながら、かけがえのない私らしさをより豊かに育んでいくために、ひとりひとり「内なる天秤座」を開いていくことが旬のバージョンアップと言えそうです。

この時期、双子座の木星は、天秤座テーマの一つでもある、良質なコミュニケーションについて軽やかなエールを送っているようです。
発展を司る木星と天秤座・金星との響きあいは、美意識にも通じるバランス感覚を伴って、心からワクワクできるような交友関係を育ててくれそうです。そこにはアートや音楽、お洒落の楽しみ方など、5ハウスが象徴する「人生の中での特別な喜び」が良き媒介となり、心と心のジョイントを果たしてくれることも多いでしょう。

ただし同時に、曖昧な情報に振り回されたり、猜疑心や警戒心から素晴らしい流れをブロックしてしまう雲行きもあり「丁寧に確かめること」と「素直な喜びを大切にすること」がポイントになっていきます。

広大なヴィジョンをもたらす魚座の海王星と、暮らしの中の身近な課題に対して高解像度のスキャンを行う乙女座・水星の対峙は、社会的な発信と私的な環境との間にダイナミックな葛藤を描いていて、なにか言動に踏み切る前に、一呼吸おいたチューニングが求められるかもしれません。

生涯をかけてマインドフルネスの普及に尽力しGoogle社でのリトリート指導でも話題になっていた、故ティクナットハン師も天秤座生まれでしたが、その天秤座が担当する 『内なる平和』 はこの時期、私たちひとりひとりが真摯に向き合うべきテーマとして、需要度を増しそうです。
「電話でもメールでも 何気ないSNSの投稿でも 一呼吸おいて 心に微笑みを持って 伝えること」をこころがけてみてください。

乙女座の水星と牡牛座・天王星そして山羊座・冥王星のハーモニックなトライン(調和の三角形)そして魚座・海王星と形成するカイト(上場する凧)は『言葉』を放つ際のセンスについてスピリチュアルな奥行きの探求と、日常的な誠実性の架け橋を築いていくべきだと伝えています。

夏至(6月21日)から秋分にかけては、「私」が見ているこの世界について、「私」が体験しているこの人生のイマ・ココの在り方について、そして幼い頃から続いている 「私という意識」について、ついつい順応に追われ、無理をしたり頑張り過ぎたりする日々のなか、ここ数年積み重なっていったひとつひとつの思い癖をほぐしていくように、きちんと見直していくことがテーマでした。

今秋、秋分図の太陽が示すミッションは、「個の在り方」を確認するフェーズから 「豊かな関係性」に発展させていくフェーズへと移行しています。私たちが心の奥で繋がる集合無意識の深みから、同時代を形成していく天王星・海王星・冥王星がこぞって逆行しているこの秋、世の中全体が “来るべき次の時代” に向けて準備を進めていくなかで、私たちひとりひとりにとっても、より良き未来を開いていくための重要な準備期間となりそうです。


イズモアリタ(MASAFUMI ARITA)

星の神話とタロットの図象
/伝承叡智の研究
テキスタイル&グラフィック
/デザイナー

プロフィール:
星とタロットの図案家として 未発掘の心象シンボルと無意識の同時代カルチャーをスケッチしている。2004年より世田谷ものづくり学校にアトリエを構え、コンバースシューズやヤコブセンのチェアをはじめ、BEAMS、IDEE、CIBONE、サザビー、ほぼ日、JTB、伊勢丹BPQC、高島屋、等で様々なプロダクトを発表してきた。近年は、独自の縄文&出雲的な感性と星々との呼応から制作活動を展開。古代の伝承から同時代のものまで古今東西の文化に詳しく、ゼロ歳からのワークショップ、美術大学で造型指導も行っている。

イズモアリタ lit.link
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