INTRODUCTION
星に夢中になり始めたのは14歳のころ、当時(1980年)手描きで作成したホロスコープを眺めては、惑星が示す意味と同時代の出来事との共時性にワクワクしていたのを覚えています。
そのときの天体配置で特に印象的だったのは土星と木星が共に乙女座から天秤座に移動して約600年ぶりに風のエレメントに集っていたこと。
いまでは多くの人が耳にする「風の時代」へのストロークを感じながら未来の私らしい在り方を模索していました。
そこから半世紀近い月日を経た現在、新しい時代の到来は外からもたらされる以上に、個々の内なる気づきと豊かな繋がりから拡がっていくのだと実感しています。
この連載では、惑星たちが奏でる二十四節気ごとの天体配置から、より魅力的で私らしい暮らしを楽しむための星々の語らいをお伝えしていきます。
霜降(そうこう)・蠍座の季節(23October)
太陽が蠍座に入る10月23日(霜降)から、射手座へと移動する11月22日にかけて、 蠍座の支配星・冥王星は、私たちが日頃向き合ってこなかった問題に対して注意と集中を促しているようです。
これまで直視してこなかったが故に、漠然と感じていた怖れや不安など、
心の奥でなんとなく気になっていた事柄に関して、明確な洞察や指標を得ていくための絶好のタイミングといえるでしょう。
例えば、防災対策、歯の治療や気になる箇所の精密検査、政治や経済に関する関心など、広い意味での危機管理に関して丁寧な確認作業を進めることで、安定した平静さを実感しながら気持ちを整えていけそうです。
人間関係においても、蓄積していた違和感や不満など、心の深層に潜む被害者意識や無意識の巧妙な責任転嫁が起きていないか、改めて確認してみることで、考えすぎや思い込みを排し、本当に伝えるべきことは何なのか、心の奥を整理していくことが出来そうです。
暑すぎず寒すぎず、心地よい季節だからこそ、生かされている恩恵を改めて実感しながら大切な人との絆や暮らしも含めた、人生のメンテナンスに取り掛かる好機といえます。
もう一つ、この時期のトピックとして冥王星の水瓶座入りがあり、ここから人類がかつて経験したことがないような時代の変化を形成していきそうです。
20年後に「現在」を振り返って見たときに、まだ言語化されていない、新しい言葉の概念でしか言い表せないような、私たちの価値観を根底から見立てなおしていくレベルの変化です。
冥王星がアメリカの天文学者クライド・トンボーによって発見されたのは1930年のこと。
当時11歳の少女ヴァニーシア・バーニーがこのネーミングを提案したことから冥界を司る神Pluto(プルート)と命名されました。
日本では、宮沢賢治・稲垣足穂と並んで星好きな日本人に親しまれていた天文民俗学者: 野尻抱影によって「冥王星」と名付けられ今日に至っています。
公転周期約250年というスローな周期の冥王星ですが、天王星・海王星と同じく肉眼で視認出来ないことから、
集合意識や共通無意識と呼ばれる深層領域から、それまでの当たり前を根本から変えていく、ダイナミックな象意を持っています。
毎年10月下旬から11月中旬まで太陽が蠍座を運行するのですが、今年の蠍座の季節はその支配星である冥王星の働きかけに特別な意味が込められていて、
私たち一人一人の心の奥に潜む“根元的な怖れ”や“罪悪感の投影”の確認とその具体的な克服へのプロセスに関して新たな認識の光が差し込んでいきそうです。
それらの問題に関して「難しい」という呪文を言い訳に、見ないように逃げてしまう方が楽なのかもしれませんが、かけがえのない私らしさを大切に、親しい人との日常生活を豊かに維持していくためにも、広く柔軟な視野を伴う生き生きとした感性で考察を巡らせ、ゆっくり確かめていくことが求められています。
私自身は占星術の背景にある、数千年も前から伝承されてきた東西の叡智、深層心理学、最先端の科学的な認識、本質に根差したアートや洗練されたデザイン思考に触れていくことで、 一見難しく感じられる問題の奥に本質的な安らぎを探し出しては、コツコツ表現していきたいと考えています。
そして何より大切な人たちと美味しいワインを飲みながら、心地よい秋の日差しのなか、冥王星が示す深い洞察力に導かれながら、本質的な話題や哲学的な語らいを楽しみにしています。
イズモアリタ(MASAFUMI ARITA)
星の神話とタロットの図象
/伝承叡智の研究
テキスタイル&グラフィック
/デザイナー
プロフィール:
星とタロットの図案家として 未発掘の心象シンボルと無意識の同時代カルチャーをスケッチしている。2004年より世田谷ものづくり学校にアトリエを構え、コンバースシューズやヤコブセンのチェアをはじめ、BEAMS、IDEE、CIBONE、サザビー、ほぼ日、JTB、伊勢丹BPQC、高島屋、等で様々なプロダクトを発表してきた。近年は、独自の縄文&出雲的な感性と星々との呼応から制作活動を展開。古代の伝承から同時代のものまで古今東西の文化に詳しく、ゼロ歳からのワークショップ、美術大学で造型指導も行っている。
イズモアリタ lit.link
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