INTRODUCTION

星に夢中になり始めたのは14歳のころ、当時(1980年)手描きで作成したホロスコープを眺めては、惑星が示す意味と同時代の出来事との共時性にワクワクしていたのを覚えています。
そのときの天体配置で特に印象的だったのは土星と木星が共に乙女座から天秤座に移動して約600年ぶりに風のエレメントに集っていたこと。
いまでは多くの人が耳にする「風の時代」へのストロークを感じながら未来の私らしい在り方を模索していました。
そこから半世紀近い月日を経た現在、新しい時代の到来は外からもたらされる以上に、個々の内なる気づきと豊かな繋がりから拡がっていくのだと実感しています。
この連載では、惑星たちが奏でる二十四節気ごとの天体配置から、より魅力的で私らしい暮らしを楽しむための星々の語らいをお伝えしていきます。

夏至・蟹座の季節(21 June)
2025年6月21日 11時42分 東京

2025年6月21日

太陽が蟹座に入り、一年で最も昼が長くなる夏至のころ。
空は白く輝き、光は強くなりながらも、どこか陰翳を帯びはじめます。

日本で育った私たちは、
この“まぶしさ”の奥に、もうひとつの風情、その静けさや気配に、
無意識のうちに耳を澄ます感性を備えているといわれています。

梅雨を越え、夏に訪れるのは
風鈴、花火、灯籠流し、蝉時雨、
そして、夏の宵に灯りの消えた縁側で語られる怪談。
魂の奥深くにひそむ、記憶の束にふれる季節の始まりです。

そんな季節に、ふと思い起こされるのが、
蟹座生まれのラフカディオ・ハーン(小泉八雲)。

遠い異国からこの国のフォークロアに魅せられ、
やがて松江へと辿り着き、
静けさと気配の文化を、世界に伝えたひとりです。

「日本の山や川には、神々の気配が漂っている。
それを感じるのは、静かに耳を澄ます者の特権だ。」

「神社の森や古道には、目に見えぬ力が宿り、
訪れる者に静かに語りかけてくる。」

「日本の美は、語られざるもの、示されざるものの中に宿る。
静寂こそが、その本質である。」

八雲が日本に見出したのは、言葉の背後にたゆたう気配、
沈黙のなかに息づく心の機微でした。

西洋的な合理性や明快さではすくい取れない、
曖昧さのなかに漂う、やわらかな情感。

それはまさに、蟹座に象徴される感性です。

水辺にひっそりと佇みながら、
そっと誰かの記憶を受けとめるような、
繊細に包み込む力。

ハーンはそれを、「日本」という風土のなかに見出し、 私たちに語りかけていたのかもしれません。


星の配置から読む 2025年の夏至図

2025年6月21日 11時42分

太陽は蟹座に入り、双子座のMCにカルミネート。
木星とともに、牡羊座に集う土星・海王星とスクエア(90度)を形成しています。
この夏至図は、インターセプトとダブルハウスと呼ばれる、少し専門的な配置に加え、
乙女座の火星のヨッド(神の手)も張り巡らされていて、
奥行きのあるリーディング要素に満ちています。

日常生活の中に息づく違和感や、守りたいと感じる精神的な価値を、
どのようにして社会的な言葉へと変換していけるか。

共に暮らす社会や、様々な価値観との対話を開いていくために、
いま、内なる感受性と外的な現実とのすり合わせが、
深いレベルで求められているのかもしれません。

特に、冥王星の逆行と、月の配置がもたらす深層的な問いかけは、
ものごとの奥に隠れていた本質的な輪郭をあぶり出しながら、
私たちに静かにこう問いかけているようです。

「いま、あなたはどんな未来に、心を結びつけていますか?」

それは一足飛びの変化ではなく、
日々の暮らしのなかで丁寧に積み重ねられていく、問いの共有。

蟹座の太陽が照らすのは、個人の感情を超えて
寄り添いあう心を思い出すひととき。

2025年の夏至は、「過去の延長としての未来」ではなく、
未来そのものを自らの選択として迎えにいく節目となるでしょう。


イズモアリタ(MASAFUMI ARITA)

星の神話とタロットの図象
/伝承叡智の研究
テキスタイル&グラフィック
/デザイナー

プロフィール:
星とタロットの図案家として 未発掘の心象シンボルと無意識の同時代カルチャーをスケッチしている。2004年より世田谷ものづくり学校にアトリエを構え、コンバースシューズやヤコブセンのチェアをはじめ、BEAMS、IDEE、CIBONE、サザビー、ほぼ日、JTB、伊勢丹BPQC、高島屋、等で様々なプロダクトを発表してきた。近年は、独自の縄文&出雲的な感性と星々との呼応から制作活動を展開。古代の伝承から同時代のものまで古今東西の文化に詳しく、ゼロ歳からのワークショップ、美術大学で造型指導も行っている。

イズモアリタ instagram
@izumoarita