嬉しい時も、ときめく時も、辛い時も、悲しい時も⋯⋯⋯。いつも音楽は、人の心に触れ、
寄り添い、潤いをもたらす。私にとって音楽は丸で血液のようだ。音楽と共に素敵な生活を。
Vol.8 私とベース・ボール・キャップ。Byヒコ・ウォーケン
私は50年来、ベースボールキャップの愛好者である。数も80個くらいある。最もアメリカで野球を見るのが好きで、観戦する時にスタジアムに同化する意図から始まった。New Yorkヤンキース帽は原色がネイビーであるはずが、何十年来、愛用し日焼けしてグレーに変色してしまった。

私のスタイルはいつでもベースボールキャップの日々である。ネイビージャケットに白パンツ、スエードブルゾンにチノパン、本格サファリジャケットにジーンズ、ツイードジャケットにカシミアスエイター、スーツの日もである。
そのせいかすっかり私のトレードマークになってしまった。私の生業、コンサルの日やLiveも同様である。そこからクライアントには『タカケンの野球帽』(私の社名、高橋流通研究所がいつの間にか略称された)は通り名になった。ベースボールキャップを被っているといろんな事がある。
オークランド・アスレチックの本拠地、オークランドは今はなくアスレチックスは暫定的にサクラメントに移転。28年にラスベガスへ移転の予定だ。オークランド時代のキャップを譲ってくれという人が大勢いる。
あるいはクリーブランド・インデイアンズの球団名はガーディアンズに変更。インデイアン・マークのキャップも今や貴重品になった。
ベースボールキャップを被っているといろんなことがある。クライアントで別部署の方に、帽子の色を見て『年期の入ったヤンキーフアンですね。往年の選手では誰が好きですか?』と聞かれ『デレク・ジーター』と返すと、すっかり仲良くなり『今度、一緒に仕事しましょう』と福をもたらす。
沖縄・北谷のアメリカン・ビレッジ内にちょっと有名な帽子屋がある。そこの店長が『そのキャップ、ボストンのフェンウエイ・パーク内の店で買ったのですか?』と私のレッド・ソックス帽子のサイドにフェンウエイ・パークの刺繍を見て羨ましいそうに話しかける。そこから盛り上がって仲良くなる。
ある時、ホテルのロビーラウンジで打ち合わせしていると、妙に斜め前のテーブルの外国人の視線が気になった。話しが終わり、帰り支度をしていると、その外国人がツカツカと笑顔でやって来た。私のレッド・ソックスの帽子を見て『Bostonフアンですか?』、『何年もフェンウエイに通ってます』と答えると『私はBostonから来ました。Boston出身が殆ど居なくて、Bostonの話しができない』と苦笑気味。『Bostonに来たら、フェンウエイ近くか、コプリー・プレイス辺りに泊まるのですか?』と聞かれ『僕は海が好きなので、クインシー・マーケット近くに泊まり、地下鉄でフェンウエイに行く』と答えると、Bostonで何を食べる?クラムチヤウダーとシーフードとなり、店の情報交換に進む。帰り際には名刺をくれBostonに来たら連絡を、となった。アメリカ人と商談中だった日本人二人は苦笑していたが、アメリカ人は東京にレッド・ソックスフアンが居て大満足というところ。
こうしてベースボールキャップが取り持つ縁は数知れない。時には仕事に繋がったり、友人が増える。概ね良好なネットワーク作りに発展する。一度暇があれば、ベースボールキャップにまつわる交流図を作ろうかと思う。
そう言えば最近では、日本の女子もベースボールキャップをファッション・アイテムに被り出した。ヤンキースのネイビーも多いが何故か女子はベージュに白のロゴマークがお気に入りのようで、表参道辺りで良く目立つ。
ひとつ困り事と言えば私の50年来のトレードマークだった筈のキャップをトランプさんが被り出した。スーツに赤か白の出立ちだ。これを1日に何度もTVニュースで見ることになる。そのうち『ヒコさん、トランプみたいですね』と言われかねない。冗談ではない、キャリアが違う、と言い返そうか。そんな日がやって来そうだ。
おっと本題のベースボールキャップとJAZZの話しをしよう。何と言ってもフランク・シナトラ『Theme From New York, New York』だ。ヤンキースタジアムでヤンキーが勝って直ぐ近くの地下鉄の階段を上がる。この曲が何処からでも聴こえてくる。地下鉄に乗ってダウンタウンへの帰り道はスタジアムから乗ったヤンキーフアン、ヤンキー帽がいっぱい。

私はそこからヘッドフォンを取り出してシナトラを続ける。夜だから『Fly Me To The Moon』がマンハッタンの夜空を見上げ、気分が良い。
私は好きな球団は複数あるが、根っからのメジャーベースボール好きだから、基本は本拠地のフアンと同化するように野球を楽しむ。アメリカの都市と野球と音楽。私にとって切っても切れない楽しみである。

ヒコ・ウォーケン(YASUHIKO TAKAHASHI)
ライフスタイル デザイナー
プロフィール:
ファッション、流通マーケティング分析、企画、音楽プロデュース、映像、販促、メデイア情報、講演を駆使し、ライフ・スタイルデザインを軸に多くの企業コンサルティングに携わっている。独自の感性、レーダー力、分析力で唯一無二のビジネスに定評が集まる。特に自らの持論である『文化情報経済』は常に時代を先取し、ビジネス・トレンドを創造し続け、今にある。現在は日本版【クオリティー・オブ・ライフ】の創造発信と体験型ライフデザインに力を注ぎ、精度の高い時間創造を提起している。
マデイソンコンサルティング創業者。