Vol.3 ナチュラルワインを分類してみる

2024年8月13日

まずは思い出してください。

ナチュラルワインとは「原料である葡萄の栽培と、葡萄をワインに仕上げる醸造とが、自然なアプローチでなされるワイン」です。
明確な定義がないナチュラルワインを少しでも分かりやすくするために整理してみます。

◆葡萄の栽培方法で整理する。 

①減農薬栽培 フランスではリュット・レゾネ Lutte raisonnée
殺虫剤や化学肥料など、化学物質を出来るだけ使わずに栽培します。
決まった時期に少ない量の農薬を使用する場合、必要な時にのみ使用する場合、病気や害虫被害がなく使用しないで済んでしまう場合も含んでいます。

リュット・レゾネもまた明確な定義がない曖昧な言葉で、造り手がそのように言ってしまえばリュット・レゾネになってしまいます。
リュット・レゾネの認証マークはありませんが、減農薬栽培を含むサステナブルな農法の認証は存在するので、リュット・レゾネを判断する目安にもなりそうです。

代表的な認証の一つに1998年に設立された【Terra Vitisテラ・ヴィティス】があります。

「環境と人に優しいサステナブルなワイン造り」を掲げ、自然環境を守る減農薬栽培はもちろん、働く人の労働環境や健康管理、廃棄物の処理など、厳しい基準が設けられています。

②ビオロジック Biologique(=オーガニック Organic)有機農法。
殺虫剤や化学肥料など化学物質を使用せず栽培します。世界中に様々な認証機関があり、それぞれの詳細な規定をクリアーしたものが認証を得ることができます。

代表的な認証【AB(Agriculture Biologique アグリキュルチュール・ビオロジック)エービーマーク】
1981年、フランス政府が制定した認証。「有機農業」という意味。

【ECOCERTエコセール、エコサート】
1991年、フランス発祥の世界最大クラスの認証。

【Euro leafユーロリーフ】
1992年、EUが制定した認証。2012年に改訂され、より厳格な規定が加えられました。

 

③ビオディナミ Biodynamie(=バイオダイナミクス Biodynamics)
1924年、オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した理論をもとに生まれた手法。殺虫剤や化学肥料など化学物質を使用せず栽培するのは②のビオロジックと同じですが、さらに厳しい規定があります。

指定された植物や鉱物など、自然界の物質を調合したプレパラシオンという天然のお薬のようなものを葡萄畑に散布します。豊かな土壌づくりや、円滑な光合成、植物の健全な生育を期待するためです。また、月の運行サイクルと植物の成長に強い関係があると考え、それに基づいて作られた「ビオディナミカレンダー」に沿って作業が行われます。

代表的な認証
【DEMETER デメテール、デメター】
1927年、ドイツの生産者組合から始まった認証。1997年にはデメテール・インターナショナルが設立。ヨーロッパにとどまらず世界的な認証機関となっています。

【BIODYVIN ビオディヴァン】
1995年、フランスの生産者組合から始まった認証。あのロマネ・コンティなど一流ドメーヌもメンバーになっています。

◆酸化防止剤の使用量や酵母の選択など、醸造方法で整理する。 

④ナチュラル方式ワイン
これまで栽培方法で整理してきましたが、上記のそれぞれの認証を得るには酸化防止剤の使用量についても制限されています。
それをクリアーし認証を得たワインは、葡萄の栽培と醸造とが自然なアプローチでなされている、というある程度の目安になることに間違いありません。
しかし、それ以上に自然度の高いワインをこころざす造り手も少なくありません。

葡萄の果皮などに付着する天然酵母による発酵や、酸化防止剤無添加などの醸造を規定する認証はこれまでありませんでしたが、フランスのINAO(国立原産地名称研究所)によってようやく運用が始まりました。
【Vin Méthode Nature ヴァン・メトード・ナチュール】です。
2019年、ワイン生産者などによって構成されるヴァン・ナチュール保護組合が立ち上げました。
最も自然度の高い公の認証だと考えて良いと思います。

★オーガニック栽培認証葡萄のみ使用可。
★収穫は全て手摘み。
★天然酵母による発酵。
★酸化防止剤(亜硫酸)無添加、または添加量30mg/L以下。発酵前、発酵中の添加不可。
など12項目の厳しい条件をクリアーしなければなりません。

認証を取得しない生産者。

認証を得ずとも、自然度が高く素晴らしいチュラルワインを造っている生産者も多く存在します。規模が小さくワインの生産量が少ないため、認証に費用を掛けたくないのが理由の一つです。そんな生産者も応援していきたいと心から思います。

他にもある、ナチュラルワインを連想させるワード。

・ビオワイン
②と③がビオワインと呼ばれることが多いようです。④も含まれます。

・自然派ワイン=ヴァン・チュール=ナチュラルワイン
明確な定義はありません。①②③の中でも自然度の高いもの。最も自然度の高い④のイメージが強くなりつつあります。

・無添加ワイン
添加物のないワイン。主に酸化防止剤無添加を言います。葡萄の栽培方法と切り離して考える必要があります。

・ヴィーガンワイン
製造行程中、一切の動物的要素を排除して造られたワイン。例えば、清澄作業に必要な卵白や動物由来のコラーゲンの代わりにベントナイトなどを使用します。葡萄の栽培方法や酸化防止剤の使用などと切り離して考える必要があります。

代表的な認証
【V-Label ブイ-ラベル】
1996年、EVU(ヨーロッパベジタリアン連合)が運営する認証

次回は、ナチュラルワインを造るために最も大切な工程、葡萄の栽培について掘り下げてお話しします。お楽しみに!

丸山謙二さん(KENJI MARUYAMA)

有限会社みどりや酒店代表取締役

プロフィール:
大学卒業後、建設工事の現場監督を経て、家業の有限会社みどりや酒店に入社。三代目社長。
(社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
ショップでのワイン販売、飲食店のワインリスト提案、ワインセミナー講師、たまに配達、そのほか、生産地に脚を運び自ら買い付けるワイン人。
自然派ワインを広めるべくワイン関連の様々なイベントを企画、開催。異業種とのコラボレーションなどにも積極的に携わる。美味しいものを食べて、ワインとの相性を試したり、想像したりすることが大好きなおじさんだが、最近体脂肪率が気になり筋トレを続けている。
ロワールワイン ワインアドバイザーコンクール全国第3位。みどりや和飲学園園長。
自然派ワインで世界平和!を願う、やぎ座のAB型。子年。