Vol.2 2024春、食べる冒険
春は酢飯の季節。ちらし寿司の季節です。柔らかい、みずみずしい、爽やかで華やかな⾷材に酸っぱいご飯はピタリと合ってきます。酢飯の上いっぱいに詰まった⾷材、彩り、スンと⾹るお酢。昼も晩も、お祝いの席にも最適で、ちらし寿司があるだけでテーブル上は魔法がかかったかのように⼀気に豪華に。
さて、「ちらし」というからには、何を散らすかという問題。⼀番には、⾃分のお好きな具材を散らすのが⼤正解、そして、ちらし寿司にはトレンドがあると私は考えています。
⼀通りの、変わらない伝統的な型とは別に、⾃分の「今」とか「旬」などが反映されるもの、それらを思いっきり散らせるのが良いところだと思っています。⼼の万華鏡を覗くつもりで、気の向くままに、あれこれを散らす。どんなに散らしても、最後は酢飯が全てを受けとめてくれるので安⼼。そう、これほどまでに、⾃由に今を詰め込めるお料理って、ないのです。
どんなちらし寿司にするかということと、合わせる飲み物やサイドメニューを何にするかということはいつもセット。ここ最近の昼間のご飯会では、和⾷にも酢飯にも⽩ワインやスパークリングを1杯⽬に合わせることが多くなりました。それによって、よりカジュアルに和⾷やちらし寿司を楽しめるような気がしています。
2024年春の私の「⾷」へのテーマは「⾷べる冒険」です。冒険ということで、勇気をもって前⼈未到の領域で様々な⾷材を散らしてみるにあたり、“キマる”ちらし寿司になるためのちょっとしたポイントをいくつかお伝えします。
まずは彩り。⽬に⾒て気持ちがあがるような春野菜や⻩⾦⾊の卵焼きを使⽤することは⼤きなポイントの⼀つと⾔えます。栄養も⼤事ですが「⾊を⾷べる」ということ。ちらし寿司は⾒た⽬重視でいきます。
ふわふわとした春の感覚を添えたい時には極細の鰹の⽷削りを使います。こうすることで⾷感はとても軽やかに、⾒た⽬もとても優しくなります。次に、お酢を使⽤した⾷材やピリッと酸っぱい⽊の実など何か取り⼊れます。その他がどんな素材でも、酢飯と他の⾷材を繋ぐアクセントになることが狙いです。
私は通年を通して⻘⼭椒や刻みピクルスをよく使います。そして、⾷材に垣根を作らないということ。最近はチーズ類も酢飯に合うことを発⾒して、いろいろ取り⼊れています。とろッと半分溶けているようなブリー、もしくはペコリーノ・ロマーノなど削り⼊れてみたりしています。⽇常のご飯ですから既存の概念関係なく、ここは楽しむところ。酢飯のように和⾷のド真ん中をいくご飯こそ少し洋⾷寄りに、洋⾷の王道をいくご飯こそ1箇所どこか和な⾷材を取り⼊れる。そんなチャレンジができると感じています。
酢ばす⼊りの酢飯は、酢飯ですが⾷材に酢漬け(マリネ)の要素も取り込んでいることで⽩ワインに驚くほどピッタリ。今⽇もナチュラルなワインで乾杯!
➖ レシピ ➖
<材料>春野菜(さやえんどう、みょうが)
⽷削り節
卵焼き(⽣クリームに⼊れてマイルドに)
海⽼
酢ばす(蓮根の酢漬け)
カマンベールチーズ <酢飯に混ぜた素>
万能ねぎ 8本
⽣姜 10g(親指ぐらい)
みょうが 1個
どんこ(椎茸) 2個
ちりめんじゃこ 10g
⽩胡⿇ ⼤さじ1
万能出汁(めんつゆ) ⼤さじ1
醤油 ⼤さじ1
酒 ⼤さじ1
みりん ⼤さじ1
キビ糖 ⼩さじ1
味噌 ⼩さじ1
① 寿司桶に酢飯を⽤意する
② 酢飯に混ぜる元は予め⽤意(すべて刻み調味料とよく混ぜる)しておき、①と和える
③ 春野菜や⽷削り節、卵、チーズなど②の上に盛り付ける
たねいちとも子さん(TOMOKO TANEICHI)
料理研究家/ごはんブロガー
/ブランディング・ディレクター
プロフィール:
健康的で肩ひじ張らない料理の提案、よりよく健やかに⽣きるためのライフスタイルを体現。⾷品メーカーや化粧品会社との商品開発、⾷と美容の企画をプロデュース。 コミュニティの場として料理教室を設け16年続けている。20代は公益財団法⼈に⼊社し芸術⽂化の助成に係る。その中で健康こそ財産だと確信して30代は美容と健康の道へ。⼥性誌を中⼼とした美容業界での活動とケータリングやレシピの提案など⾷まわりの活動をスタート。2015年には料理法や⾷の⽂献を深めるため⼥⼦栄養⼤学に⼊学、2017年卒業。2016年にリトリートオイル「BUDDHI」のコスメティック・ディレクターに就任。コスメをはじめ美容と食のディレクターとして活動している。