Vol.5 ナチュラルワインの醸造

2024年10月5日

前回の「葡萄の栽培」に続き、今回はその葡萄を原料とする「ワインの醸造」についてお話しします。

ナチュラルワインは、醸造についても自然なアプローチでなされることは以前よりお伝えしている通りです。

ナチュラルワインの中でも特に自然度の高い醸造🅰と、その対極にある効率重視の大量生産ワインの醸造🅱とを比較して、その違いについて説明していきます。

① 葡萄を仕込む

収穫した葡萄の果実(又はその果汁)などをタンクや木樽などに投入します。

🅰添加物を加えません。化学農薬に頼らず栽培した、十分に糖度が上がった健全な果実だけをしっかり選別し仕込む必要があります。 雑菌が混入した場合、そのタンクの中身が全てダメになってしまうこともあるので細心の気配りが必要です。

🅱大型の収穫機を使用して得た果実には腐敗果や未熟な果実が混ざることがあります。酸化防止剤を添加して殺菌し清潔な状態を作ります。 糖度が不足していれば補糖を、酸度が不足していれば補酸をする場合もあるそうです。

② アルコール発酵

仕込んだ果実(又はその果汁)の糖分が、酵母の働きによってアルコールと炭酸ガスになります。

🅰果皮などに付いている天然酵母により自然にアルコール発酵が始まります。スタートが得意な酵母、中盤で頑張る酵母、最後の総仕上げに活躍する酵母など、 数種類の天然酵母がバトンタッチしながら複雑なアルコール発酵が進みます。このことがナチュラルワインの独特な風味や個性に繋がっています。

🅱培養酵母を添加し安全にアルコール発酵を進めることができます。またどんなワインに仕上げたいのか風味の設計がしやすく、大量かつ均一的に管理することができます。 🅰に比べ、複雑な風味というよりは、分かりやすく万人受けするワインが多いように思います。

③ 熟成

アルコール発酵後のワインをタンクや木樽の中で熟成、静置します。

🅰酸化防止剤を使用しません。自然に任せます。

🅱ワインが健全に熟成するように酸化防止剤を添加します。

④ 澱引き、清澄、ろ過

🅰澱引きとは発酵後にタンクや木樽の底に溜まった酵母や不純物などの澱と上澄みのワインを分ける作業です。 上澄みのワインを、ポンプを使わず高低差を利用し丁寧に次のタンクへ移動させる場合もあります。ワインを出来るだけ酸化させないようにするためです。 またワインの透明度や安定性を高めるための清澄作業や過度なろ過は行いません。ワインの美味しさや個性を取り除いてはならないという考えからです。

🅱ワイン中に浮遊する微細な澱を沈殿させるため、清澄剤を添加しそれを取り除きます。そしてしっかりと濾過をして品質を安定させます。

⑤ 瓶詰め

🅰酸化防止剤を使用しません。ポンプを使用せず高低差を利用して瓶詰めする場合もあります。醸造中に一度も酸化防止剤を添加せずろ過しないワインは非常に不安定です。 再発酵や変質などが起こらないように、流通や保存において温度管理が必要です。

🅱品質を安定させるため酸化防止剤を添加して瓶詰めします。

醸造中に何度も登場する酸化防止剤の使い方については、🅰🅱問わずワインの造り手の中でも様々な考え方があるため、「Vol.7 酸化防止剤を理解する」で深く掘り下げて説明します。

いずれにしても、ワインの醸造方法の違いで様々な風味のワインが生まれます。ある人にはとても美味しく感じるワインでも、別の人の口には合わない場合も当然あります。それはそれで良いですし、そうあるべきだと私は思います。

例えば音楽。色々なスタイルがあるべきです。ある人には心地よいリズムでも、別の人には雑音と感じ場合も当然あります。いつもクラシックを好んで聴いていてもたまにはジャズ。集まる仲間によってはロックで盛り上がることもあるでしょう。
いつどこで誰と何を楽しむのか。ワインも音楽も一緒。どちらにも様々なスタイルがあり、それぞれに魅力と存在理由があるはずです。

次回は、ワインの産地と味わいの関係について解説します。お楽しみに!

丸山謙二さん(KENJI MARUYAMA)

有限会社みどりや酒店代表取締役

プロフィール:
大学卒業後、建設工事の現場監督を経て、家業の有限会社みどりや酒店に入社。三代目社長。
(社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
ショップでのワイン販売、飲食店のワインリスト提案、ワインセミナー講師、たまに配達、そのほか、生産地に脚を運び自ら買い付けるワイン人。

自然派ワインを広めるべくワイン関連の様々なイベントを企画、開催。異業種とのコラボレーションなどにも積極的に携わる。美味しいものを食べて、ワインとの相性を試したり、想像したりすることが大好きなおじさんだが、最近体脂肪率が気になり筋トレを続けている。

ロワールワイン ワインアドバイザーコンクール全国第3位。みどりや和飲学園園長。
自然派ワインで世界平和!を願う、やぎ座のAB型。子年。