Vol.2 ナチュラルワインとは

2024年7月2日

ナチュラルワインという言葉をよく耳にするようになりました。

一体何者なのか。
健康に良いの?オーガニック?ビオワイン?ビーガン?サステナブル??

前回のコラムでも少し触れましたが、一言で説明するとこうなります。「原料である葡萄の栽培と、葡萄をワインに仕上げる醸造とが、自然なアプローチでなされるワイン」です。

では、一般的な大量生産のワインはどのように造られるのでしょうか。多くの利益を確保するため効率を重視したワイン造りを行います。

葡萄畑では時間や労力を減らすため殺虫剤や化学肥料などを使用します。そうすることで多くの葡萄を安価に実らせることが出来るのです。 その葡萄を大型の収穫機で素早く収穫。醸造所に運んだ葡萄をタンクに仕込み、糖度が不足していれば補糖を、酸度が不足していれば補酸をする場合もあるそうです。 更に殺菌効果を発揮する酸化防止剤を添加しクリーンな状態をキープ。温度管理の下、ねらい通りの風味を付けることが出来る培養酵母で安全に発酵。

仕上げにしっかりと濾過をして品質の安定を図ります。(メーカーからみて?)安心安全でおいしいワインの出来上がりです。このようなワインは、美味しく出来ても自然な味わいのワインとは違う気がします。

その対極にあるナチュラルワインは、余計なものを足さず手間暇を惜しまず造られます。化学物質を出来るだけ制限し葡萄を栽培します。そのためには注意深く畑を観察し葡萄の健康状態や生育状況を把握する必要があります。

完熟した葡萄を手摘みするなど丁寧に収穫。健全な果実のみを選び酸化防止剤に頼ることなくタンクに仕込みます。主に葡萄の果皮に付着する天然酵母で自然に発酵させるなど、人為的な介入を出来るだけ減らして醸造。仕上げの濾過も控えます。このように出来るだけ自然に任せてワイン造りを行います。

この出来るだけが曖昧で分かりにくいですよね。
ナチュラルワインという言葉には、実は明確な定義がありません。ワインメーカーや流通関係、ソムリエなどのワインのプロの間でもその解釈は様々です。

大切なのは、ナチュラルワインの造り方ではなく、「葡萄本来の自然な美味しさが感じられるワインを造る」というこころざし、目的です。このようなナチュラルワインを造り上げる手段が「出来るだけ自然に任せる」になるわけです。

①栽培は無農薬または厳格な減農薬農法。
畑を注意深く観察し要所で少量の化学物質は使用しても良いと考えています。
健康な葡萄の樹は地中深く根を伸ばし、その土壌の個性を根から吸収して果実に反映します。

②酸化防止剤無添加または少量の添加にとどめる。
無添加は雑菌の繁殖や酸化のリスクが非常に高くワインの変質にも繋がります。無添加に拘り過ぎて欠陥ワインになるくらいなら添加した方が良いですし、少量添加しても葡萄本来の自然な風味を損なわないと考えています。

③補糖、補酸は基本的に行わない。
その土地の気候やその年の葡萄の作柄など自然環境を受け入れ、その個性をワインに表現することこそ価値があると考えています。ナチュラルワインは毎年風味が違って当たり前です。

④天然酵母による発酵が基本。
葡萄の果皮に付着する天然酵母は複雑な発酵を進めワインに個性をもたらします。しかし複雑な発酵を望まない場合は安全な培養酵母を選択しても良いと考えています。ニュートラルな培養酵母であれば、その産地の風土や土壌、葡萄、そしてワインを造る人の信念を表現できるはずです。

⑤仕上げの濾過は控えめに。
濾過はワインの透明度や安定性を高めるために行いますが、必要以上にしてしまうとワインの美味しさや個性を取り除いてしまうことにもなります。健全な澱であれば無濾過も良いですし、適度な濾過にとどめる必要があると考えています。

このように出来るだけ自然に任せて造られたナチュラルワインは、肩ひじ張らずに自然体で楽しめるどこか牧歌的な雰囲気があります。忙しい日常の中にホッと一息つけるこのアナログ感が人気の理由かもしれません。

次回は、そのナチュラルワインを分類します。
オーガニックやビオロジック、ビオディナミ、ビーガンなど認証制度をご紹介し、整理してみます。お楽しみに!

丸山謙二さん(KENJI MARUYAMA)

有限会社みどりや酒店代表取締役

プロフィール:
大学卒業後、建設工事の現場監督を経て、家業の有限会社みどりや酒店に入社。三代目社長。
(社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
ショップでのワイン販売、飲食店のワインリスト提案、ワインセミナー講師、たまに配達、そのほか、生産地に脚を運び自ら買い付けるワイン人。
自然派ワインを広めるべくワイン関連の様々なイベントを企画、開催。異業種とのコラボレーションなどにも積極的に携わる。美味しいものを食べて、ワインとの相性を試したり、想像したりすることが大好きなおじさんだが、最近体脂肪率が気になり筋トレを続けている。
ロワールワイン ワインアドバイザーコンクール全国第3位。みどりや和飲学園園長。
自然派ワインで世界平和!を願う、やぎ座のAB型。子年。